マンションの水回りリフォームで注意したい「アスベスト」とは
マンションの水回りリフォームを計画する際、見落とせないのが「アスベスト」です。一時期、建材として広く使用されたアスベストは、健康へ悪影響を及ぼします。とくに築年数の経ったマンションは、アスベストが含まれている可能性が高く注意が必要です。本記事では、アスベストの基本知識や注意点、具体的な対応策について解説します。
アスベストの事前調査は義務?
アスベストは、かつて防音材や断熱材として広く使用されていた鉱物ですが、その危険性が認識されるようになり、現在では使用が禁止されています。アスベストを吸引することで、肺がんや中皮腫などの深刻な健康被害を引き起こす恐れがあるため、とくにリフォームや解体工事においてはそのリスクを避けるための対策が重要です。
2023年10月1日以降、リフォームや解体工事を行う際にはアスベストの事前調査が法律で義務付けられています。これにより、アスベストによる健康被害を未然に防ぐための取り組みが強化されています。この義務は、すべての解体・改修工事に適用され、工事の規模や請負金額に関わらず実施が求められます。
具体的には、解体部分の床面積が80㎡以上の工事や、請負金額が100万円以上の改修工事が対象となります。この調査の目的は、建材にアスベストが含有されているかを事前に確認することです。もしアスベストが含まれていた場合、その取り扱いや除去方法について対策を講じる必要があります。
調査は、専門の技術者が現地調査を行い、必要に応じてサンプルを採取してアスベストの定性分析を実施します。分析結果が0.1%以上のアスベスト含有を示す場合、適切な対策を講じることが求められます。調査結果は、工事開始の14日前までに労働基準監督署や自治体に報告しなければならず、報告書は3年間の保存が義務付けられています。
これにより、アスベストに関する情報が適切に管理され、後のトラブルを防ぐことができます。また、調査や報告を怠ったり、虚偽の報告を行った場合には罰金が科されることがあるため、施工業者は法令を遵守し、適切な手続きを行うことが強く求められます。
アスベスト除去の方法
アスベストを除去する方法は、建物の状況やアスベストの含有レベルに応じて選択されます。レベル1は発じん性がもっとも高く、おもに吹き付け材に使用されるアスベストが該当します。レベル2は保温材や断熱材などに使われるアスベストで、発じん性は中程度です。
レベル3は比較的発じん性の低い建材が該当します。本記事では、おもにアスベストレベル1〜3で用いられる除去工法について解説します。
除去工法
除去工法は「リムーバル工法」とも呼ばれ、専用の機材を用いてアスベスト含有層を完全に取り除くものです。この方法はコストが高額になりがちですが、アスベストを完全に除去するため、建物解体時の再作業が不要になることからもっとも推奨される工法です。
封じ込め工法と囲い込み工法
アスベストレベル1・2で用いられる工法には「封じ込め工法」と「囲い込み工法」があります。まず封じ込め工法とは、既存のアスベスト含有材の上に溶剤を吹きかけ、アスベストを外側から封じ込める方法です。この方法では、アスベストがその場に残るため、建物の解体時には再び除去作業が必要です。
囲い込み工法は、アスベスト含有層を板材やほかの素材で覆い、密封することで飛散を防ぐ方法です。この工法も封じ込め工法と同様にアスベストが残存する点が難点です。
高圧水噴射工法
とくにアスベストレベル2で多く用いられる工法として、高圧水を噴射してアスベストを含む塗材を除去する方法があります。この方法はアスベスト含有層に水分を含ませ、飛散を抑えることが可能です。また、水のみを使用するため、環境負荷が低い点も特徴です。
剥離工法
剥離工法は、アスベストレベル3でのおもな工法です。薬品を用いてアスベスト含有材を柔らかくし、取り除く工法です。この方法は湿潤化による飛散防止が特徴で、散水が不要で処理も比較的かんたんです。
しかし、取り残しが発生する場合があるため、ほかの工法との併用が求められることがあります。
アスベストの除去費用について
アスベスト除去の費用は、建物の種類やアスベストの状態、施工条件によって大きく異なります。一般的には、1平方メートルあたり1万~8万5,000円が相場とされていますが、この幅の広さはアスベストの発じん性や除去作業の難易度によるものです。
とくに、古い建物や吹き付け材に使用されたアスベストの場合、作業が複雑で危険性が高いため、費用が増加する傾向があります。そのため、リフォームや解体を検討する際は、事前に専門業者による調査と見積もりを取得することが不可欠です。
先述したとおり、アスベストは発じん性に基づいて3つのレベルに分類されます。レベル1の場合、除去費用はほかのレベルに比べて高額になります。反対にレベル3は費用が低く抑えられることが一般的です。また、除去費用には、実際の作業以外にも事前調査や仮設工事、廃棄物処理などの費用が含まれます。
これらの要素が全体のコストに大きく影響を与えるため、見積もりを受け取った際は内訳を詳しく確認しましょう。とくに仮設工事や廃棄物処理は、除去費用の中で大きな割合を占めるケースが多く、これらを考慮しないと予想以上の費用がかかることもあります。
まとめ
かつてアスベストは建材として広く使われていましたが、発がん性があり、非常に危険です。しかし、古いマンションではアスベストが見つかる可能性があるため、リフォームの際は注意しなければなりません。水回りのリフォームを依頼するときは、アスベスト調査を行い、信頼できる専門業者の指導のもと、適切な方法で安全に作業を進めましょう。